相続コラム
2026/09/15 2026/10/10

相続した実家など不動産の分け方は?揉めない遺産分割と適正評価を弁護士が解説

実家などの不動産が絡む相続は、現金の相続に比べて格段に揉めやすいものです。理由はシンプルで、不動産は物理的に分けられず、しかも「いくらの価値なのか」という共通認識を持ちにくいからです。

先に結論をお伝えします。不動産の相続を円満に進めるコツは、次の3点に集約されます。

  • 分け方は「現物分割・代償分割・換価分割・共有分割」の4つ。状況に応じて選び、共有はできるだけ避けます。
  • 不動産には複数の価格があります。遺産分割で基準になるのは原則「時価(実勢価格)」。早い段階で適正な評価をそろえることが、揉めない最大のポイントです。
  • 名義変更(相続登記)は2024年4月から義務化。取得を知った日から3年以内に行わないと過料の対象になります。

本記事では、この全体像を順番に解説します。当事務所の弁護士は宅地建物取引士の資格も持つため、不動産の評価の考え方を踏まえながら、法的な調整を進めることができます。

なぜ不動産の相続は揉めやすいのか?

結論:不動産は「物理的に分けられない」うえに「価値の共通認識を持ちにくい」ため、公平感をめぐって対立が起きやすいからです。

現金であれば1円単位で公平に分けられますが、実家の一戸建てをそのまま3人で分けることはできません。さらに、その家が「いくらなのか」は人によって見立てが違います。住み続けたい相続人は低めに、現金で受け取りたい相続人は高めに評価したくなり、感情的な思い入れも重なって、話し合いがこじれます。だからこそ、早い段階で分け方の選択肢と適正な評価をそろえることが重要になります。

実家など不動産の遺産分割、4つの方法とは?

結論:「現物分割・代償分割・換価分割・共有分割」の4つです。分けにくい実家などは、売却して現金で分ける“換価分割”が公平でシンプルになりやすく、共有分割は将来のトラブルの火種になりやすいため原則避けます。

分け方 内容 向くケース・注意点
現物分割不動産や預金などを、そのままの形で各相続人に割り当てる。財産の種類が多く、価値が釣り合うときに有効。不動産1件を分けるのには不向き。
代償分割1人が不動産を取得し、他の相続人へ現金(代償金)を支払って調整する。実家に住み続けたい人がいるとき。取得者に代償金の支払い原資が必要。または遺産に相当額の預貯金が存在することが必要。
換価分割不動産を売却し、得た現金を相続人で分ける。公平でシンプル。分けにくい実家・空き家に最適。譲渡所得税や売却の手間に配慮。
共有分割1つの不動産を複数人の共有名義のまま持つ。“とりあえず”で選ばれがちだが、売却・活用に全員の同意が必要。次の相続で権利者が増え複雑化。原則避ける。

実務では、実家を売って現金で分ける「換価分割」か、住み続ける人がいる場合の「代償分割」が中心になります。特に、相続人の間できっちりと分けて確実に清算したいなら、換価分割(=現金化)が分かりやすい選択肢です。そもそも代償分割をするには不動産を取得する相続人が不動産を取得しない相続人に代償金を支払うことになりますが、この代償金の金額が大きくなりがちであるため、実務上は、遺産に不動産の他に相当額の預貯金があって当該預貯金を不動産を取得しない相続人が取得することとしあとは多少の調整で足りるような場合でないかぎり代償分割は難しいのが現実です。

不動産の「評価額」はどう決める?なぜ揉めるのか?

結論:1つの不動産に複数の価格が存在するためです(いわゆる“一物四価・五価”)。遺産分割で基準にすべきは原則として「時価(実勢価格)」で、固定資産税評価額などで代用すると不公平が生じることがあります。

同じ土地でも、目的によって次のように異なる価格が使われます。どれを基準にするかで取り分が変わるため、評価は対立の火種になりやすいのです。

価格の種類 主な用途・性格 水準の目安
実勢価格(時価)実際に市場で売買される価格。遺産分割の原則的な基準。最も高くなりやすい
公示地価・基準地価国・都道府県が示す標準的な土地の価格。実勢の目安
相続税路線価相続税・贈与税の計算に使う価格。公示地価の約8割
固定資産税評価額固定資産税や登録免許税の計算に使う価格。公示地価の約7割

たとえば固定資産税評価額を基準にすると、実勢価格より3割程度低くなることがあり、その不動産を取得する人に有利・現金で受け取る人に不利になりがちです。適正に分けるには、実勢価格の見立て(宅地建物取引士の目線)や、必要に応じて不動産鑑定士の鑑定を用いて、評価の土台をそろえることが欠かせません。

あわせて読みたい:不動産評価の考え方は「代償分割における不動産評価の罠|時価と固定資産税評価額、どちらが正解?」で詳しく解説します。

揉めないための進め方は?(協議→調停→審判)

結論:まず相続人全員による「遺産分割協議」を行い、まとまらなければ家庭裁判所の「調停」、それでも決まらなければ「審判」に進みます。放置は不利になりやすく、特に“10年ルール”に注意が必要です。

放置のリスク:遺産分割の「10年ルール」

2023年4月1日施行の民法改正により、相続開始から10年を過ぎると、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなり、法定相続分どおりの分割になります。生前の援助や介護の貢献を取り分に反映してほしい場合は、早めの着手が有利です。施行前に発生した相続には経過措置があり、2028年3月31日までは猶予されます。

あわせて読みたい:「遺産分割の10年ルールとは?2028年3月期限までにすべきこと」で、期限と具体的な対応を解説します。

相続した不動産の名義変更(相続登記)はいつまで?

結論:2024年4月1日から相続登記は義務化されました。不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象になります。過去の相続も対象で、その期限は2027年3月31日です。

名義変更をしないままだと、その不動産は売却も担保設定もできず、次の相続でさらに相続人が増えて手続きが複雑になります。遺産分割がすぐにまとまらない場合は、暫定的な対応として「相続人申告登記」を行えば、いったん義務を果たしたことになり過料を回避できます。ただし、これは暫定措置であり、分割が決まった後に改めて正式な相続登記が必要です。

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

あわせて読みたい:「過去の相続も対象!相続登記義務化の“2027年3月末”期限と10万円過料」で、ご自身の期限の考え方を解説します。

実家を「売って分ける(現金化)」場合、税金はどうなる?

結論:分けにくい実家や空き家は、売却して現金で分ける“換価分割”が公平でシンプルです。売却益には譲渡所得税がかかりますが、要件を満たせば特例で軽減できる場合があります。

代表的なのが、一定の要件を満たす実家を相続して売却した場合に譲渡所得を大きく控除できる「空き家の3,000万円特別控除」(相続人が3人以上の場合は2,000万円まで)や、相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」です。いずれも適用要件と期限があるため、売却の時期を含めた段取りが重要になります。当事務所では、遺産分割の調整と並行して、特例の期限から逆算した売却時期の検討をお手伝いします。売却や税務申告が必要な場合は、ご意向を伺ったうえで不動産会社や税理士と連携して進めます。

出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

あわせて読みたい:税金の詳細は「空き家の3,000万円控除はいつまで?」、手順は「換価分割の手順と注意点|売却までの段取りを弁護士×宅建士が解説」へ。

不動産相続を専門家(弁護士・宅建士)に相談するメリットや費用は?

結論:不動産が絡む相続は、「評価の考え方」と「法的な調整」を同じ窓口で検討できる専門家に相談すると、評価をめぐる対立を早い段階で整理しやすくなります。

当事務所の弁護士は宅地建物取引士の資格も持ちます。路線価・固定資産税評価額・実勢価格の違いを踏まえて評価の考え方を整理し、必要に応じて査定や鑑定を手配したうえで、弁護士として分け方の交渉を進めます。そのため、「評価が合わずに前に進まない」という不動産相続特有の停滞を避けやすくなります。売却や税務申告が必要な場合は、ご意向を伺ったうえで不動産会社や税理士と連携して進めます。

費用について

費用は、案件の内容をお伺いしたうえで、面談時に見積もりと計算方法を明確にお伝えします。着手前に費用の見通しをご理解いただいてからご依頼いただけるため、安心してご相談ください(当事務所では無料相談は行っておりません。ご相談は60分ごと税込み11,000円でお受けしています)。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 遺産分割に期限はありますか?

A. 協議そのものに法律上の期限はありませんが、実務上は複数の期限に注意が必要です。相続開始から10年で特別受益・寄与分の主張が制限され、相続登記は取得を知った日から3年以内、相続税の申告・納付は10か月以内です。

Q. 不動産は固定資産税評価額で分けてもよいですか?

A. 相続人全員が納得すれば可能ですが、原則の基準は時価(実勢価格)です。固定資産税評価額は実勢より3割程度低いことが多く、その不動産を取得する人に有利・現金で受け取る人に不利になりやすいため、慎重な検討をおすすめします。

Q. 相続登記をしないとどうなりますか?

A. 2024年4月以降、正当な理由なく3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。加えて、売却や担保設定ができず、次の相続で権利関係が複雑化します。

Q. 共有名義のままにしておくのは避けた方がよいですか?

A. はい。売却・活用に共有者全員の同意が必要になり、次の相続で権利者がさらに増えます。将来のトラブルを避けるため、できるだけ早期の解消をおすすめします。

Q. 相談は無料ですか?

A. 当事務所では無料相談は行っておりません。初回から60分ごとに税込み11,000円でお受けし、費用は計算方法を含めて面談時に明確にお伝えします。

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この記事の監修者

家村 邦雄(いえむら くにお)/石神井法律事務所 弁護士(東京弁護士会)・宅地建物取引士
東京都練馬区・石神井公園駅徒歩3分の事務所で相続を中心に取り扱う。弁護士と宅地建物取引士の両資格を持ち、不動産が絡む相続の「評価・分割・名義変更・売却の段取り」まで、法律面から一貫してサポートできるのが強み。難しい手続きをわかりやすく説明し、依頼者が納得して進められることを大切にしている。

※当事務所は宅地建物取引業者ではないため、売買の仲介は行いません。


【免責事項】
本コラムは、相続に関する一般的な情報をお伝えすることを目的としたものであり、個別の事案に対する法務・税務上のアドバイスではありません。記載内容は公開日時点の法令・制度に基づいており、その後の改正等により取扱いが変わる場合があります。また、税務の取扱いについては、個別の事情により結論が異なることがあります。実際のご判断にあたっては、ご事情を伺ったうえでの助言が必要となりますので、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。本コラムの情報をもとに行われた行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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