相続コラム
2026/09/30

相続の期限はいつまで?登記義務化・10年ルール等の一覧と罰則を弁護士が解説

相続が始まると、手続きごとに期限が決まっています。期限を過ぎると、過料(行政上のペナルティ)の対象になるものもあれば、本来使えたはずの権利や税金の特例を失うものもあります。しかも、相続登記の義務化や遺産分割の「10年ルール」など、近年の法改正で新しい期限が次々に加わりました。

先に結論をお伝えします。相続の期限は、大きく次の3つに分けて押さえると整理しやすくなります。

  • 相続開始を知った時から3か月・4か月・10か月:相続放棄、準確定申告、相続税の申告・納付。短期間で判断が必要です。
  • 1年〜10年:遺留分侵害額請求(1年)、相続登記(3年)、不動産売却時の税の特例(3年前後)、遺産分割の10年ルール。放置しているうちに過ぎやすい期限です。
  • 法改正の経過措置による期限:過去の相続分の相続登記は2027年3月31日、10年ルールの猶予は2028年3月31日、住所等変更登記(過去の変更分)は2028年3月31日です。

本記事では、まず一覧表で全体像を示し、そのうえで期限を過ぎた場合の不利益と、不動産がある相続で特に注意すべき点を解説します。当事務所の弁護士は宅地建物取引士の資格も持つため、法律上の期限と、不動産の評価・売却にかかる時間の両方を踏まえて段取りをご提案できます。

相続の期限を一覧で確認するには?

結論:主な期限は次の表のとおりです。「いつから数えるか(起算点)」が手続きごとに異なるため、相続開始日だけでなく、相続を知った日や相続税の申告期限も合わせて確認することが大切です。

手続き 期限(起算点) 過ぎるとどうなる 詳しく解説
相続放棄・限定承認自分が相続人になったことを知った時から3か月以内原則として単純承認(借金も含めてすべて相続)とみなされるB-4
準確定申告(亡くなった方の所得税)相続の開始を知った日の翌日から4か月以内延滞税・無申告加算税などがかかる場合がある―
相続税の申告・納付相続の開始を知った日の翌日から10か月以内延滞税・無申告加算税などがかかる。特例を申告時に使えない場合がある―
遺留分侵害額請求相続の開始と侵害の事実を知った時から1年(相続開始から10年)請求する権利が消滅するB-5
相続登記不動産の取得を知った日から3年以内(2024年3月以前の相続は原則2027年3月31日まで)10万円以下の過料の対象になる。未登記のままでは、売却や担保設定の登記ができないB-1
取得費加算の特例(売却時)相続税の申告期限の翌日から3年以内の売却(相続開始から3年10か月)払った相続税を取得費に加算できないC-2
空き家の3,000万円特別控除(売却時)相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までの売却特別控除を受けられないC-1
遺産分割の10年ルール相続開始から10年(2023年3月以前の相続は、10年経過時と2028年3月31日のいずれか遅い日)原則として特別受益・寄与分を主張できず、法定相続分(遺言で相続分の指定があればその割合)で分けることになるB-2
住所等変更登記住所・氏名の変更日から2年以内(2026年3月以前の変更は2028年3月31日まで)5万円以下の過料の対象になる―

このうち、登記の義務化や10年ルールは、昔に起きた相続にも適用されます。「何年も前に親が亡くなったまま、実家の名義が親のまま」というケースも対象になるため、心当たりがある方は早めに確認してください。

相続開始から「3か月・4か月・10か月」で何をすべき?

結論:最初の3か月で「相続するか放棄するか」を決め、4か月で亡くなった方の所得税を申告し、10か月で相続税を申告・納付します。いずれも財産の全体像がわからないと判断できないため、財産調査を最優先で始めます。

3か月以内:相続放棄・限定承認の判断

亡くなった方に借金がある場合は、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行うことで、借金を引き継がずに済みます。期限は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内です。財産調査が間に合わない場合は、この3か月以内に家庭裁判所へ期間の延長(伸長)を申し立てることができます。

注意したいのは、期限内であっても、相続財産を処分(売却や解約など)すると相続を承認したとみなされ、放棄できなくなる場合があることです。実家の片付けや預金の引き出しをする前に、放棄の可能性があるかを確認してください。

4か月以内:準確定申告

亡くなった方に確定申告が必要な所得(事業所得や不動産所得など)があった場合、相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を申告します。賃貸不動産を持っていた方の相続では、該当することが多い手続きです。

出典:国税庁 No.2022 確定申告を要する人が死亡したとき

10か月以内:相続税の申告・納付

遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。練馬区など地価の高いエリアでは、自宅の土地だけで基礎控除額に近づくことも少なくありません。なお、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減によって税額がゼロになる場合でも、申告をしなければこれらの特例は使えません。

出典:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

2027年・2028年に迫る制度の期限とは?

結論:法改正により、過去の相続や過去の住所変更にも適用される期限が3つあります。相続登記は2027年3月31日、遺産分割の10年ルールの猶予は2028年3月31日、住所等変更登記は2028年3月31日です。

相続登記の義務化(過去の相続分は2027年3月31日まで)

2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。2024年3月以前に起きた相続も対象で、その場合の期限は原則として2027年3月31日です。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

遺産分割の10年ルール(猶予は2028年3月31日まで)

2023年4月1日から、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、原則として生前贈与などの特別受益や、介護などの寄与分を主張できなくなりました。2023年3月以前に起きた相続には猶予があり、相続開始から10年を経過する時と2028年3月31日のいずれか遅い時までは主張できます。また、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の調停・審判を申し立てていれば、10年を過ぎても特別受益・寄与分を主張できます。

分け方の考え方そのものは、「相続した実家など不動産の分け方は?揉めない遺産分割と適正評価を弁護士が解説」で詳しく解説しています。

住所等変更登記の義務化(過去の変更分は2028年3月31日まで)

2026年4月1日から、不動産の所有者は、住所や氏名が変わった日から2年以内に変更登記を申請することが義務になりました。2026年3月以前の変更も対象で、期限は2028年3月31日です。相続登記を済ませた後に引っ越した場合も対象になるため、相続登記とあわせて確認しておくと安心です。

出典:法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」

期限を過ぎるとどうなる?罰則と失う権利は?

結論:期限切れの不利益は、「過料がかかるもの」「税金が増えるもの」「権利を失うもの」の3種類です。過料は金額に上限がありますが、権利を失うタイプは取り返しがつかず、影響が大きくなりがちです。

不利益の種類 該当する期限 内容
過料がかかる相続登記/住所等変更登記正当な理由なく申請しないと、相続登記は10万円以下、住所等変更登記は5万円以下の過料の対象になる。
税金が増える準確定申告/相続税の申告/売却時の税の特例延滞税や無申告加算税がかかる。取得費加算や空き家の特別控除の期限を過ぎると、売却時の税負担が大きくなる。
権利を失う相続放棄/遺留分侵害額請求/10年ルール借金も含めて相続したことになる、遺留分を請求できなくなる、特別受益・寄与分を主張できなくなる。

なお、過料は期限を1日過ぎたらすぐに科されるものではなく、法務局からの催告に応じなかった場合などに、裁判所の手続きを経て判断される仕組みです。ただし、「遺産分割の協議がまとまらない」というだけでは、申請しない正当な理由とは扱われない可能性があります。後述の相続人申告登記で、義務を果たしておくことが大切です。

不動産があると期限の管理が難しくなるのはなぜ?

結論:不動産は評価や分け方で揉めやすく、協議が長引くうちに税の特例や売却の期限が迫るからです。不動産を売って分けるなら、売却にかかる期間から逆算して、協議をまとめる期限を先に決めておくことが重要です。

協議が長引くと、相続税の特例を申告時に使えない

自宅の土地の評価額を大きく下げる「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」は、原則として相続税の申告期限(10か月)までに遺産分割がまとまっている必要があります。間に合わない場合は、いったん特例を使わずに申告・納付し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、その後3年以内に分割がまとまった場合は、分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることで、払い過ぎた税金の還付を受けられます。調停や審判が続いて3年以内にまとまらない見込みのときは、3年を経過する日の翌日から2か月以内に、税務署長の承認を申請しておく必要があります。一時的にせよ、手元の現金で多めに納税しなければならない点に注意が必要です。

売却には数か月かかるため、特例の期限から逆算する

実家を売って現金で分ける「換価分割」では、査定、買主探し、契約、引き渡しまでに数か月かかるのが一般的です。取得費加算の特例は相続開始から3年10か月、空き家の3,000万円特別控除は相続開始から3年を経過する年の年末まで(かつ2027年12月31日まで)に売却を終える必要があるため、協議に時間をかけすぎると、特例の期限に間に合わなくなるおそれがあります。

出典:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

出典:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

【弁護士×宅建士の視点】「協議の期限」を先に決める

不動産が絡む相続では、「評価が合わない」ことが協議の停滞の大きな原因の一つです。当事務所では、宅地建物取引士としての知見を活かして、路線価・固定資産税評価額・実勢価格の違いを踏まえて評価の考え方を早い段階で整理し、必要に応じて査定や鑑定を手配して評価の土台をそろえたうえで、弁護士として分け方の交渉を進めます。そのうえで、相続税の申告期限や売却時の特例の期限から逆算し、「いつまでに協議をまとめるか」を最初に設定することで、期限切れによる不利益を防ぎます。売却や税務申告が必要な場合は、ご意向を伺ったうえで不動産会社や税理士と連携して進めます。

期限が迫っている・過ぎてしまった場合の対処法と費用は?

結論:期限が迫っている場合は、暫定的に義務を果たす手続きや、期間を延ばす手続きがあります。すでに過ぎてしまった場合も、例外が認められたり、別の方法で解決できたりすることがあるため、あきらめずに早めにご相談ください。

状況 取れる対応の例
相続放棄の判断が3か月に間に合わない期限内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる。
遺産分割がまとまらず、相続登記ができない「相続人申告登記」を行えば、申出をした相続人は登記の義務を果たしたことになる。分割がまとまったら、その日から3年以内に正式な相続登記を行う。
相続税の申告期限までに分割がまとまらない法定相続分で分けたと仮定して申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく。
遺留分を侵害されている知った時から1年以内に、内容証明郵便などで請求の意思を相手に伝える。請求後の金銭の支払請求権は原則として5年で時効にかかるため、話し合いが長引く場合は調停・訴訟も検討する。
10年が迫っているが協議がまとまらない10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割調停(または審判)を申し立てれば、特別受益・寄与分を主張できる。
10年を過ぎてしまった相続人全員が合意すれば、特別受益や寄与分を考慮して分けることも可能。

相続放棄は、3か月を過ぎた後でも、亡くなった方と交流がほとんどなく、相続財産がまったくないと信じていたことに相当な理由がある場合などには、借金の存在を知った時から3か月以内であれば、例外的に受理されることがあります。ただし、例外にあたるかどうかは個別の事情によって判断され、家庭裁判所で受理されても、後に債権者から放棄の有効性を争われることがあります。自己判断で様子を見ることは避け、借金の存在を知ったら、すぐに専門家にご相談ください。

費用について

費用は、案件の内容をお伺いしたうえで、面談時に見積もりと計算方法を明確にお伝えします。着手前に費用の見通しをご理解いただいてからご依頼いただけるため、安心してご相談ください(当事務所では無料相談は行っておりません。ご相談は60分ごと税込11,000円でお受けしています)。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 遺産分割そのものに期限はありますか?

A. 遺産分割の協議自体には、法律上の期限はありません。ただし、相続開始から10年を過ぎると特別受益や寄与分を原則として主張できなくなるほか、相続税の申告(10か月)や相続登記(3年)など、分割の結果に関わる期限があります。実務上は、これらの期限を意識して早めにまとめることが重要です。

Q. 相続登記の過料は、期限を過ぎたらすぐに科されますか?

A. 期限を過ぎた時点で直ちに科されるわけではなく、法務局からの催告に応じなかった場合などに、裁判所の手続きを経て判断されます。遺産分割がまとまらない場合でも、相続人申告登記を行えば、申出をした相続人は義務を果たしたことになるため、放置せずに手続きを行ってください。

Q. 3か月を過ぎてから借金が見つかりました。もう相続放棄はできませんか?

A. 原則として3か月を過ぎると放棄はできませんが、相続財産がまったくないと信じていたことに相当な理由がある場合などには、借金を知った時から3か月以内であれば、例外的に受理されることがあります。ただし、例外にあたるかは個別の事情によって判断され、受理されても後に債権者から放棄の有効性を争われることがあります。借金が見つかったら、すぐにご相談ください。

Q. 期限が複数重なっている場合、何から手を付ければよいですか?

A. 取り返しがつかない期限から優先します。一般的には、相続放棄(3か月)と遺留分侵害額請求(1年)を最優先で確認し、次に相続税の申告(10か月)、そのうえで相続登記や売却時の特例の期限を管理します。不動産がある場合は、売却にかかる期間も考慮して段取りを組みます。

Q. 相談は無料ですか?

A. 当事務所では無料相談は行っておりません。初回から60分ごとに税込11,000円でお受けし、費用は計算方法を含めて面談時に明確にお伝えします。

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この記事の監修者

家村 邦雄(いえむら くにお)/石神井法律事務所 弁護士(東京弁護士会)・宅地建物取引士

東京都練馬区・石神井公園駅徒歩3分の事務所で相続を中心に取り扱う。弁護士と宅地建物取引士の両資格を持ち、不動産が絡む相続の「評価・分割・名義変更・売却の段取り」まで、法律面から一貫してサポートできるのが強み。難しい手続きをわかりやすく説明し、依頼者が納得して進められることを大切にしている。

※当事務所は宅地建物取引業者ではないため、売買の仲介は行いません。


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本コラムは、相続に関する一般的な情報をお伝えすることを目的としたものであり、個別の事案に対する法務・税務上のアドバイスではありません。記載内容は公開日時点の法令・制度に基づいており、その後の改正等により取扱いが変わる場合があります。また、税務の取扱いについては、個別の事情により結論が異なることがあります。実際のご判断にあたっては、ご事情を伺ったうえでの助言が必要となりますので、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。本コラムの情報をもとに行われた行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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