相続コラム
2026/10/31 2026/10/29

預貯金・有価証券の相続|口座凍結の解除から分け方まで弁護士が解説

ご家族が亡くなると、その方の銀行口座は使えなくなります。公共料金の引落としが止まり、入院費や葬儀費用の支払いに困ることもあります。株式や投資信託をお持ちだった場合は、さらに手続きが複雑になります。

先に結論をお伝えします。預貯金と有価証券の相続は、次の3点を押さえておくと見通しが立ちます。

  • 凍結されても、一定額までは1人で引き出せる。2019年(令和元年)7月1日から、相続人が単独で払戻しを受けられる制度があります。ただし上限の150万円まで引き出せるとは限らず、残高と法定相続分に応じた計算になります。
  • 預貯金も有価証券も、相続人全員で分け方を決める必要がある。法定相続分どおりに自動で分かれるわけではありません。
  • 株式は「売ってから分ける」ことができない。先に相続人名義の証券口座へ移す必要があり、その準備に時間がかかります。

本記事では、口座が凍結される時期から、引き出す方法、必要書類、有価証券の引き継ぎ方、売却したときの税金、相続税の評価までを順に解説します。

口座はいつ凍結される?

結論:金融機関が名義人の死亡を知った時点です。市区町村役場に死亡届を提出しても、そこから金融機関へ自動的に伝わる仕組みはありません。

「役所に死亡届を出すと、その日のうちに全部の口座が止まる」と理解されている方がいらっしゃいますが、そうではありません。金融機関が死亡を知るのは、ご遺族からの連絡によるのが通常です。ゆうちょ銀行の案内でも、相続の手続きは、まず窓口または相続コールセンターへ申し出るところから始まるとされています。

凍結されると、その口座からの出金と引落としが止まります。公共料金や固定資産税の口座振替、家賃や年金の受取りにも影響しますので、早めに振込票への切替えや受取口座の変更を進める必要があります。

出典:ゆうちょ銀行「ゆうちょの相続手続き」

【弁護士の実務目線】「葬儀費用の支払いに間に合わせたかったので、金融機関に連絡する前に下ろしておいた」という方もいらっしゃいます。すでに引き出してしまった場合でも、直ちに相続放棄ができなくなるわけではありません。社会通念上相当な範囲の葬儀費用に充てたのであれば、相続財産の処分には当たらないとする裁判例があります。ただし、葬儀の規模や支出の内容によって判断は分かれますので、「葬儀に使ったのだから問題ない」と自己判断なさらないでください。領収書を保管し、何にいくら使ったかを説明できるようにしたうえで、早めにご相談ください。借金の有無がはっきりしないうちは、引き出す前にご相談いただくのが安全です。

凍結された口座から、お金を引き出す方法はある?

結論:2つあります。金融機関の窓口で手続きする「遺産分割前の払戻し」と、家庭裁判所に申し立てる「仮分割の仮処分」です。前者は相続人が1人で、他の相続人の同意なしに利用できます。

項目 遺産分割前の払戻し(民法909条の2) 仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項)
手続きの場所 金融機関の窓口 家庭裁判所
他の相続人の同意 不要 不要(ただし他の相続人の利益を害しないことが必要)
前提 なし 遺産分割の調停または審判が家庭裁判所に係属していること
限度額 各口座の残高の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額。同一の金融機関につき150万円まで 家庭裁判所が必要と認めた額
向く場面 当面の生活費や葬儀費用など、比較的少額の支払い 150万円では足りない支払いがある場合

遺産分割前の払戻しの計算方法は次のとおりです。

各口座の相続開始時の残高 × 3分の1 × その相続人の法定相続分

たとえば、残高1,200万円の普通預金があり、相続人がお子さん2人だけの場合、1人あたりの計算額は1,200万円 × 3分の1 × 2分の1 = 200万円です。ただし同一の金融機関に対しては150万円が上限ですので、実際に払い戻せるのは150万円までとなります。この上限は口座ごとではなく、その金融機関に対する請求の合計額にかかります。

金融機関が複数ある場合は、それぞれの金融機関ごとに150万円までの計算になります。

なお、150万円はあくまで上限であり、残高が少なければその額には届きません。たとえば残高300万円の普通預金があり、相続人がお子さん3人だけの場合、1人あたりの計算額は300万円 × 3分の1 × 3分の1 = 約33万円です。「150万円までは誰でも引き出せる」という制度ではない点にご注意ください。

出典:e-Gov法令検索「民法」第909条の2

出典:e-Gov法令検索「民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令」

払い戻した額は、最終的な取り分から差し引かれる

この制度でよくある誤解が、「法律で認められた権利なので、自分の取り分とは別に150万円を受け取れる」というものです。そうではありません。

民法909条の2は、「当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす」と定めています。つまり、払い戻した額は遺産の前借りにあたり、最終的な遺産分割の際に、ご自身が受け取る遺産の取り分から差し引いて精算することになります。

当面の支払いに充てるための制度であって、取り分が増える制度ではない、とご理解ください。

窓口で即日お金を受け取れるわけではない

通帳とキャッシュカードを持って窓口へ行けばその場で引き出せる、と思われがちですが、そうではありません。この制度を利用するには、次のような書類をそろえて提出する必要があります。

  • 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
  • 相続人全員の戸籍または全部事項証明書
  • 払戻しを希望する方の印鑑登録証明書
  • 払戻しを希望する方の本人確認書類

金融機関の案内でも、「書類を頂いた後、相続預金の払戻しまでには、内容の確認等のため一定の時間を要します」とされています。必要書類は金融機関によって異なりますので、入院費や葬儀費用の支払期日が迫っている場合は、まず取引先の金融機関に必要書類を確認し、戸籍の取り寄せにすぐ着手してください。

出典:三井住友銀行「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」

なお、相続放棄や限定承認をお考えの場合は、この払戻しを受ける前にご相談ください。払戻しを受けること自体が相続財産の処分に当たるかについては考え方が分かれており、払戻しの目的や払い戻したお金の使い道などの事情によっては、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。社会通念上相当な範囲の葬儀費用に充てる場合は別に考える余地がありますが、線引きは個別の事情によります。

預貯金は、法定相続分どおりに自動で分かれるのか?

結論:分かれません。預貯金は遺産分割の対象であり、相続人全員で分け方を決める必要があります。

以前は、預金のようにお金で測れる債権は、相続が始まると同時に法定相続分どおりに自動的に分かれる、と考えられていました。しかし2016年(平成28年)12月19日の最高裁判所大法廷決定により、この扱いが変更されました。普通預金、通常貯金、定期貯金が遺産分割の対象とされ、その後、定期預金と定期積金も同じ扱いとされました(最高裁判所2017年(平成29年)4月6日判決)。

この変更により、相続人の1人が「自分の法定相続分だけ払い戻してほしい」と求めても、金融機関は応じられなくなりました。前の項目で説明した遺産分割前の払戻しの制度は、この不都合を補うために設けられたものです。

出典:裁判所「最高裁判所大法廷2016年(平成28年)12月19日決定(平成27年(許)第11号)」

出典:最高裁判所2017年(平成29年)4月6日判決(金融法務事情2071号88頁)

投資信託や個人向け国債も同じです。2014年(平成26年)2月25日の最高裁判所判決は、委託者指図型投資信託の受益権と個人向け国債について、相続開始と同時に当然に分割されることはないと判断しています。

出典:裁判所「最高裁判所第三小法廷2014年(平成26年)2月25日判決」

口座の解約には、何が必要?

結論:遺言書がない場合は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍一式と、相続人全員の同意を示す書類です。法定相続情報一覧図の写しを用意しておくと、戸籍の束を金融機関ごとに出し直す手間が省けます。

法定相続情報証明制度を先に使う

法務局に戸籍一式を提出して相続関係を確認してもらい、「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受ける制度です。手数料は無料で、必要な通数の交付を受けられます。

申出先は、次のいずれかの地を管轄する法務局です。

  • 亡くなった方の死亡時の本籍地
  • 亡くなった方の最後の住所地
  • 申出をする相続人の住所地
  • 亡くなった方名義の不動産の所在地

練馬区にお住まいだった方の場合、東京法務局練馬出張所が申出先の1つになります。

出典:法務局「法定相続情報証明制度」

金融機関に提出する書類

遺言書があるか、遺産分割協議が終わっているかによって、提出する書類が変わります。

状況 主に必要になる書類
遺言書がある 遺言書(自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みのもの。法務局に保管されていた自筆証書遺言は検認不要で、遺言書情報証明書を提出。公正証書遺言も検認不要)、亡くなった方の死亡が確認できる戸籍、受け取る方の印鑑登録証明書など
遺産分割協議が終わっている 遺産分割協議書(相続人全員の実印)、相続人全員の印鑑登録証明書、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人全員の戸籍
どちらもない 亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑登録証明書、金融機関所定の相続届(相続人全員の署名と実印)

手続きにかかる期間

ゆうちょ銀行の場合、まず「相続確認表」を窓口に提出し、提出後およそ1週間から2週間で貯金事務センターから必要書類の案内が郵送で届きます。その案内に従って書類をそろえて提出すると、払戻しまでにさらに時間がかかります。ゆうちょ銀行の口座で受け取る場合はおよそ1週間から2週間、他の金融機関の口座への振込で受け取る場合はおよそ3週間から4週間が目安とされています。

金融機関によって手順と期間は異なりますが、書類をそろえ始めてから実際にお金を受け取るまで、1か月以上かかることも珍しくありません。

出典:ゆうちょ銀行「ゆうちょの相続手続き」

相続人の人数が多い場合、兄弟姉妹が相続人になる場合、あるいは相続人の1人が手続きに協力しない場合は、戸籍をそろえる段階から難しくなります。金融機関の手続きと遺産分割の協議をあわせてお引き受けすることもできますので、お早めにご相談ください。

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亡くなった方の入出金の履歴は、1人で調べられる?

結論:調べられます。相続人の1人が、他の相続人の同意を得ずに、単独で取引経過の開示を請求できます。

2009年(平成21年)1月22日の最高裁判所判決は、相続人の1人が、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づいて、被相続人名義の口座の取引経過の開示を単独で求めることができると判断しています。他の相続人全員の同意がないことは、請求を妨げる理由になりません。

出典:裁判所「最高裁判所第一小法廷2009年(平成21年)1月22日判決」

【弁護士の実務目線】生前に預金が大きく減っていたという場合は、まず取引履歴を取り寄せるところから始めます。ご本人の入院や施設入居の時期と照らし合わせると、誰がいつ引き出したのかがある程度見えてきます。ただし、履歴に使途不明の出金が並んでいても、それだけで返還を求められるわけではありません。誰が引き出したのかは、原則として請求する側が明らかにする必要があります。そのうえで、引き出した側には、亡くなった方から頼まれて引き出したのかといった経緯や、何に使ったのかの説明が求められ、その説明に合理性があるかどうかが、取引履歴などの客観的な資料と照らして判断されます。また、金融機関の記録の保存期間には限りがあり、古い取引までさかのぼれないことがあります。気になる点があるのであれば、早めに取り寄せておくことをおすすめします。

あわせて読みたい:預貯金の使い込みが疑われる場合の調査と返還請求については「預貯金の使い込みが疑われる場合の調査と返還請求|不当利得返還請求の進め方」、取引履歴の請求手順は「被相続人の預金の取引履歴は単独で開示請求できる|金融機関への照会手順」で詳しく解説します。

株式や投資信託は、どう引き継ぐ?

結論:上場株式は、相続人名義の証券口座へ移します。「売って現金にしてから分ける」ことはできません。投資信託は、金融機関によっては、解約して代金を受け取ることもできます。

上場株式は、証券会社の口座で管理されています。亡くなった方の口座のまま売却することはできませんので、まず株式を引き継ぐ相続人の名義で証券口座を開き、そこへ移す(移管する)手続きが必要です。相続人がその証券会社に口座を持っていない場合は、口座開設から始めることになります。

この点が、預貯金との大きな違いです。預貯金は解約して指定の口座へ振り込んでもらえますが、株式はいったん相続人の口座に入れなければ、売ることも分けることもできません。口座開設に数日から1週間程度かかりますので、その分の時間を見込んでおく必要があります。なお、投資信託も相続人の口座へ移すのが基本ですが、金融機関によっては、相続手続きのなかで解約して代金を受け取る方法を選べることもあります。手続きの方法は、取引のあった金融機関にご確認ください。

配当の基準日を過ぎてから配当の支払いが確定するまでの間に亡くなった場合は、配当を受け取る権利(配当期待権)も相続財産に含まれます。支払いが確定しているのに受け取っていない配当金も、相続財産になります。

「売って現金で分ける」ときは、協議書の書き方に注意

相続人の1人の口座へまとめて移し、そこで売却して代金を分ける方法を換価分割といいます。手続きは簡単になりますが、遺産分割協議書の書き方を誤ると、代金を受け取った他の相続人に贈与税がかかるおそれがあります。

国税庁は、換価分割のために共同相続人のうち1人の名義で相続登記をした事例について、次のとおり示しています。

「共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。」

裏を返せば、協議書に換価分割である旨の記載がなければ、代表者が単独で取得した財産を他の相続人へ贈与したものと見られる余地があるということです。有価証券の場合も考え方は同じです。協議書には、誰の口座を経由して売却するのか、諸費用を差し引いた残額をどの割合で分配するのかを明記しておく必要があります。

あわせて、売却益が出た場合の所得税の確定申告も、代表者1人がまとめて行うわけではありません。国税庁は、遺産分割で換価代金の取得割合を定めている場合について、「各相続人は換価代金の取得割合と同じ所有割合で換価したのですから、その譲渡所得は、換価遺産の所有割合(=換価代金の取得割合)に応じて申告することになります」としています。代表者の口座を経由して売却した場合でも、税務上は各相続人が協議で定めた取得割合に応じて譲渡し、利益を得たものとして、各自が申告するのが原則です。

証券口座の種類によって源泉徴収の扱いが変わりますので、売却の前に、誰がどのように申告するのかを税理士に確認しておくことをおすすめします。

出典:国税庁「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」

出典:国税庁「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」

相続した株式を売ると、税金はどうなる?

結論:売ったときの利益は、亡くなった方が買ったときの値段をもとに計算します。相続したときの時価ではありません。ここを誤解すると、想定外の税金がかかります。

相続によって取得した株式を売却した場合の取得費は、亡くなった方が取得したときの価額と取得の時期をそのまま引き継ぎます。「相続したときの時価で取得したことになる」という理解は誤りです。

たとえば、亡くなった方が30年前に100万円で買った株式が、相続開始時に1,000万円になっていたとします。これを1,000万円で売却した場合、譲渡所得は900万円として計算されます。相続税を納めたうえで、さらに譲渡所得税がかかることになります。

出典:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」

出典:国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」

相続税を納めた場合は、取得費加算の特例が使える

相続税を納めた方が、相続した財産を一定の期間内に売却した場合、納めた相続税額のうち一定の金額を取得費に加算できます。期間は、相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。相続税の申告期限が10か月ですので、相続開始からおよそ3年10か月以内ということになります。この特例を受けるには、確定申告が必要です。

NISA口座で持っていた株式は、扱いが逆になる

亡くなった方がNISA口座(非課税口座)で保有していた上場株式等は、亡くなった日にその日の終値で売却したものとみなされ、相続人の特定口座または一般口座へ移されます。相続人は、その日の終値で取得したものとして扱われます。

つまり、NISA口座のものについては、亡くなった方の取得価額を引き継ぎません。亡くなった時までの値上がり益には課税されず、相続人が売却したときは、死亡日の終値からの値動きだけが課税の対象になります。

ただし、有利に働くとは限りません。亡くなった時点で値下がりしていた場合は、取得価額がその安い終値まで引き下げられます。しかもNISA口座のなかで生じた譲渡損失は、なかったものとみなされます。その結果、相続人がもとの買値まで値を戻した時点で売っただけで、戻った分が利益として課税されることになります。

相続人自身のNISA口座へ移すことはできません。また、亡くなった後にその口座で支払われる配当金には、非課税の扱いは適用されません。手続きとしては、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出します。

出典:国税庁「NISAに関するQ&A」

出典:国税庁「No.1464 譲渡した株式等の取得費」

なお、亡くなった年に配当所得や株式の譲渡所得があり確定申告が必要な場合は、相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行います。

出典:国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」

あわせて読みたい:証券口座の移管手続きと評価方法は「証券口座・株式を相続したら|移管手続きと評価方法、準確定申告の注意点」で詳しく解説します。

相続税の計算では、いくらと評価される?

結論:預貯金は残高に利息を加えた額、上場株式は4つの価額のうち最も低いものを選べます。

財産の種類 評価の方法 根拠
預貯金 課税時期の預入残高に、その日に解約した場合に受け取れる既経過利子(源泉所得税を控除した後の額)を加えた額。普通預金など、既経過利子が少額なものは残高のみで評価する 財産評価基本通達203
上場株式 次の4つのうち最も低い価額。(1)課税時期の最終価格、(2)課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額、(3)その前月の月平均額、(4)その前々月の月平均額 財産評価基本通達169
証券投資信託の受益証券 課税時期に解約請求した場合に受け取れる価額。基準価額から、源泉徴収される所得税相当額、信託財産留保額、解約手数料を控除して計算する(上場している投資信託は上場株式に準じて評価) 財産評価基本通達199
配当期待権 配当金の額から源泉徴収される所得税相当額を控除した額 財産評価基本通達193

出典:国税庁「No.4632 上場株式の評価」

出典:国税庁「No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価」

上場株式について4つの価額から選べるのは、株価が短期間で大きく動くためです。亡くなった日の終値だけで評価しなければならない、という決まりではありません。

あわせて読みたい:相続税の申告先と不動産の評価については「練馬西税務署・練馬東税務署での相続税申告|不動産評価で税額は変わる」で解説します。

名義が子になっている預金は、誰のものか?

結論:名義だけでは決まりません。誰がそのお金を出したのか、誰が通帳と印鑑を管理していたのかといった実態で判断されます。

親が子や孫の名義で口座を作り、お金を入れていた、というケースはよくあります。この場合、名義が子になっていても、実際には亡くなった方の財産として相続税の課税対象になることがあります。いわゆる名義預金の問題です。

判断の分かれ目は、そのお金がきちんと贈与されていたかどうかです。贈与は、渡す側と受け取る側の双方の意思が必要ですので、受け取る側が口座の存在を知らず、通帳も印鑑も親が持ったままであれば、贈与が成立していたとは認められにくくなります。

生前に贈与をしておくのであれば、贈与契約書を作る、受け取る側が自分で管理する口座に入れる、といった形で記録と実態を合わせることが適切です。

あわせて読みたい:名義預金が税務調査で問題になる場面は「名義預金とは?相続税の税務調査で否認されるケースと対策」で詳しく解説します。

10年間動かしていない口座は、どうなる?

結論:休眠預金として預金保険機構に移されますが、権利がなくなるわけではありません。元の金融機関の窓口で払戻しを受けられます。

2009年(平成21年)1月1日以後の取引を最後に10年間動きのない預金等は、休眠預金等として扱われ、民間の公益活動に活用される仕組みになっています。

ただし、移管された後も、預金者やその相続人はいつでも払戻しを受けられます。残高が1万円以上の口座については、最後の取引から9年経過後に金融機関から通知が送られ、その通知が届けば休眠預金の対象から外れます。

出典:金融庁「休眠預金等活用法Q&A」

先代の名義のまま放置されている口座が見つかることもあります。年数が経っていても払戻しは受けられますが、必要な戸籍の範囲が広がり、相続人の人数も増えているため、手続きの負担は重くなります。

亡くなった方がどの金融機関に口座を持っていたかわからない場合は、「相続時口座照会」という仕組みも使えます。亡くなった方が生前に金融機関へマイナンバーを届け出ていれば、相続人が1つの金融機関で申し出ることで、預金保険機構を通じて、マイナンバーが届け出られている他の金融機関の口座の有無を確認できます。亡くなってから10年以内が対象で、手数料は金融機関ごとに定められています(三菱UFJ銀行の場合は5,060円)。マイナンバーを届け出ていない金融機関の口座は確認できない点にご注意ください。

出典:三菱UFJ銀行「マイナンバー制度について」

練馬区の方の手続き先は?

結論:相続税の申告は町名によって2つの税務署に分かれ、法定相続情報は東京法務局練馬出張所、遺産分割の調停は東京家庭裁判所の本庁です(相手方が23区内にお住まいの場合)。

手続き 窓口 備考
相続税の申告 練馬東税務署(〒176-8503 練馬区栄町23番7号/電話 03-6371-2332)または練馬西税務署(〒178-8624 練馬区東大泉7丁目31番35号/電話 03-3867-9711) 亡くなった方の最後の住所地が基準。練馬区は町名によって2つに分かれる
法定相続情報一覧図の交付 東京法務局練馬出張所(〒179-8501 練馬区春日町5丁目35番33号/電話 03-5971-3681) 住所地・本籍地・不動産の所在地を管轄する法務局でも可
遺産分割の調停 東京家庭裁判所 本庁(千代田区霞が関1丁目1番2号) 相手方の住所地が23区内の場合

出典:東京法務局「練馬出張所」

あわせて読みたい:手続き先の一覧は「練馬区の相続手続き先一覧表|東京家庭裁判所・法務局等の管轄を弁護士が解説」で詳しく解説しています。

相談の進め方と費用は?

結論:初回のご相談では、どの金融機関にどのような資産があるかを伺い、手続きの順番と、先に片づけるべきことをお示しします。

資料がそろっていない段階でも、ご相談いただけます。通帳が見当たらない、どこの証券会社かわからない、という状態でお越しいただいて構いません。

なお、通帳やキャッシュカード、証券会社からの取引報告書、固定資産税の納税通知書など、お手元にある資料をお持ちいただけると、より具体的なご案内ができます。

費用は、案件の内容をお伺いしたうえで、面談時に見積もりと計算方法を明確にお伝えします。着手前に費用の見通しをご理解いただいてからご依頼いただけるため、安心してご相談ください(当事務所では無料相談は行っておりません。ご相談は60分ごと税込11,000円でお受けしています)。

よくあるご質問

Q. 相続人全員の同意がないと、1円も引き出せませんか?

A. そうではありません。遺産分割前の払戻しの制度により、各相続人が単独で、各口座の残高の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額まで払戻しを受けられます。ただし、同一の金融機関に対しては150万円が上限です。

Q. 150万円の上限は、口座ごとですか?

A. 口座ごとではありません。同一の金融機関に対する請求の合計額が150万円までです。同じ銀行に複数の支店の口座があっても、合わせて150万円が限度になります。金融機関が異なれば、それぞれで計算します。

Q. 遺産分割前の払戻しを受けると、相続放棄はできなくなりますか?

A. 払戻しを受けること自体が相続財産の処分に当たるかについては考え方が分かれており、払戻しの目的や払い戻したお金の使い道などの事情によっては、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。借金の有無がはっきりしていない段階では、払戻しを受ける前にご相談ください。

Q. 亡くなった方の預金の取引履歴は、私1人で取り寄せられますか?

A. 取り寄せられます。最高裁判所の判決により、相続人の1人が単独で取引経過の開示を請求できることが認められています。他の相続人の同意は必要ありません。

Q. 相続した株式を売ったときの税金は、相続したときの時価を基準に計算しますか?

A. いいえ。亡くなった方が取得したときの価額と時期をそのまま引き継いで計算します。古くから持っていた銘柄ほど、売却時の税負担が重くなります。ただし、NISA口座で保有していたものは例外で、亡くなった日の終値で取得したものとして扱われます。

Q. 上場株式の相続税の評価は、亡くなった日の終値ですか?

A. 亡くなった日の終値のほか、その月、前月、前々月のそれぞれの月平均額を含めた4つの価額のうち、最も低いものを選べます。

Q. 相談は無料ですか?

A. 当事務所では無料相談は行っておりません。初回から60分ごとに税込11,000円でお受けし、費用は計算方法を含めて面談時に明確にお伝えします。

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この記事の監修者

家村 邦雄(いえむら くにお)/石神井法律事務所 弁護士(東京弁護士会)・宅地建物取引士

東京都練馬区・石神井公園駅徒歩3分の事務所で相続を中心に取り扱う。弁護士と宅地建物取引士の両資格を持ち、不動産が絡む相続の「評価・分割・名義変更・売却の段取り」まで、法律面から一貫してサポートできるのが強み。難しい手続きをわかりやすく説明し、依頼者が納得して進められることを大切にしている。

※当事務所は宅地建物取引業者ではないため、売買の仲介は行いません。


【免責事項】

本コラムは、相続に関する一般的な情報をお伝えすることを目的としたものであり、個別の事案に対する法務・税務上のアドバイスではありません。記載内容は公開日時点の法令・制度に基づいており、その後の改正等により取扱いが変わる場合があります。また、税務の取扱いについては、個別の事情により結論が異なることがあります。なお、各機関の所在地・電話番号・受付時間および金融機関の手続きの内容は変更されることがありますので、お出かけの前に各機関の公式サイトでご確認ください。実際のご判断にあたっては、ご事情を伺ったうえでの助言が必要となりますので、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。本コラムの情報をもとに行われた行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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