相続コラム
2026/11/07

相続登記の義務化は過去の相続も対象|2027年3月31日の期限と10万円以下の過料を弁護士が解説

「父が亡くなったのはもう20年も前。実家の名義はそのままだけれど、義務化は最近の相続の話でしょう?」と思われる方もいらっしゃいますが、結論から申し上げると、相続登記の申請義務は、2024年(令和6年)4月1日より前に発生した相続にも適用されます。名義変更が済んでいない不動産をお持ちであれば、原則として2027年(令和9年)3月31日が期限です。

期限を過ぎて正当な理由がない場合は、10万円以下の過料(行政上の金銭的な制裁)の対象になります。ただし、過料が科されるまでには登記官からの催告などの手続きがあり、期限の翌日に自動的に請求が届くわけではありません。一方で、名義が亡くなった方のままでは、買主への所有権移転登記や抵当権の設定登記ができないため、売却や融資の手続きを完了できません。また、放置している間に相続人が増えるほど、話し合いは難しくなります。過料よりも、この実害のほうが大きいというのが実務の実感です。

本記事では、ご自身が対象になるかを判定する表、期限の数え方、過料に至るまでの手続きと「正当な理由」、ご自身で申請する場合の手順と費用、そして登記を放置した場合の不利益を順に解説します。相続に関する期限の全体像は、「相続の期限はいつまで?登記義務化・10年ルール等の一覧と罰則を弁護士が解説」でまとめていますので、あわせてご覧ください。

相続登記の義務化で「過去の相続」も対象になるのはどんな場合?

結論:2024年(令和6年)4月1日より前に発生した相続でも、不動産の名義変更が済んでいなければ対象です。この場合の期限は、原則として2027年(令和9年)3月31日です。

相続登記の申請義務は、2024年(令和6年)4月1日に施行された改正不動産登記法で設けられました。相続で不動産を取得した相続人は、自分のために相続が始まったことと、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(不動産登記法第76条の2第1項)。

この義務は、施行日より前に発生した相続にも適用されます(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第6項)。施行日より前の相続については、施行日である2024年(令和6年)4月1日から3年の猶予期間が設けられており、その終わりが2027年(令和9年)3月31日です。

自分が対象かを判定する

ご自身の状況を次の表に当てはめてください。相続が発生した時期と、不動産を取得したことを知った時期で、期限が決まります。

相続が発生した時期 不動産を取得したことを知った時期 相続登記の期限
2024年(令和6年)3月31日以前 2024年(令和6年)3月31日以前 2027年(令和9年)3月31日
2024年(令和6年)3月31日以前 2024年(令和6年)4月1日以後 知った日から3年以内
2024年(令和6年)4月1日以後 相続開始と同時または後日 知った日から3年以内
(上記に加えて)遺産分割で不動産を取得した場合 ― 遺産分割が成立した日から3年以内(2024年(令和6年)3月31日以前に成立した遺産分割は2027年(令和9年)3月31日まで)に、その内容に応じた登記が別途必要

多くの方は1行目に該当します。「親が亡くなってから何年も経っているが、実家の名義は親のまま」という場合は、2027年(令和9年)3月31日までに申請が必要とお考えください。

こんなケースも対象になる

  • 兄弟で話し合いがまとまらず、実家が親の名義のまま:遺産分割が終わっていなくても、後述する相続人申告登記(または法定相続分での登記)で、期限内に義務を果たす方法があります。
  • 祖父の名義のまま父も亡くなった(数次相続):祖父から父へ、父からご自身へと相続が重なっている場合も、お父様の相続でその不動産を取得したことを知っていれば、現在の相続人であるご自身が相続登記の対象になります(知った時期と期限の関係は、上の表と同じです)。この場合、原則として「祖父から父へ」「父からご自身へ」の2段階の登記が必要です。相続人の数が多くなりやすく、戸籍の収集にも時間がかかるため、早めの着手が必要です(祖父から父への登記には、後述する登録免許税の免税措置が使える場合があります)。
  • 土地だけ、建物だけ、共有持分だけ:不動産の種類や持分の大小にかかわらず、相続で取得した不動産はすべて対象です。
  • 相続人の1人に遺贈された場合:相続人に対する遺贈で不動産を取得した場合も、取得を知った日から3年以内の申請義務があります(相続人以外の方への遺贈は対象外です)。

状況別の「次の一手」

対象であることがわかったら、ご自身の状況に応じて進め方が変わります。

ご自身の状況 次の一手
遺言がある、または相続人が少なく分け方がすぐにまとまる ご自身で申請するか、専門家に依頼して、正式な相続登記を進める(後述の「相続登記を自分で申請する手順」へ)
2027年(令和9年)3月31日が迫っているが、遺産分割の話し合いが終わらない まず相続人申告登記で期限に対応し、並行して協議を進める(後述の「遺産分割がまとまらない場合」へ)
相続人が多い、連絡が取れない相続人がいる、不動産の分け方や評価で意見が分かれている 登記の前に、遺産分割そのものの法的な整理が必要。早めに弁護士へ相談する(後述の「登記を放置した場合の不利益」と記事末のご案内へ)

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

出典:法務省「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」

期限はいつから数える?「取得を知った日」とは

結論:起算点は「亡くなったことを知った日」ではなく、「自分がその不動産を取得したことを知った日」です。親が不動産を持っていたことを知らなかった場合は、具体的に知るまで義務は始まりません。

法律の条文は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」を起算点としています。法務省は、単に被相続人が亡くなったことを知っただけでは足りず、取得した不動産を具体的に知るまでは相続登記の義務はない、と説明しています。

たとえば、親が遠方に山林や畑を持っていたことを後になって知った場合、その山林や畑については、知った日から3年が期限になります。ただし、「知らなかった」という説明が通るかどうかは事情次第です。固定資産税の納税通知書が自宅に届いていた、親の口座から固定資産税が引き落とされていたといった事情があれば、知らなかったと説明するのは難しくなります。相続が始まったら、まず不動産の全体を把握することが大切です。

注意していただきたいのは、「誰が相続するかまだ話し合っていないから、自分はまだ取得していない」という考え方は通用しないことです。遺産分割が終わっていなくても、相続人は法律で定められた割合(法定相続分)で不動産を取得した状態にあります。親が不動産を持っていたことを知っていれば、その時点から3年の期限が進みます。遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記(または法定相続分での登記)で、期限内に義務を果たす必要があります。

亡くなった方の不動産を調べる方法

  • 固定資産税の納税通知書:毎年6月ごろ(東京23区の場合。市町村では時期が異なります)に届きます。同封の課税明細書に課税対象の不動産が記載されていますが、非課税の土地(私道など)は載らないことがあります。
  • 名寄帳(固定資産課税台帳):市区町村の窓口(東京23区では、不動産の所在する区の都税事務所)で、その市区町村(区)内にある亡くなった方名義の不動産を一覧で確認できます。相続人であることを示す戸籍などが必要です。
  • 所有不動産記録証明制度:2026年(令和8年)2月2日に始まった制度で、亡くなった方が登記名義人となっている不動産を、全国の登記記録から一覧にした証明書を法務局に請求できます。登記記録上の氏名・住所で検索するため、すべての不動産が網羅されるとは限りませんが、市区町村をまたいで不動産を持っていた場合に有効です。

遺産分割が後からまとまった場合は、もう一度3年

相続登記の義務には2段階あります。まず、相続が始まって不動産の取得を知った日から3年以内に、法定相続分での登記または相続人申告登記を行う義務。次に、その後に遺産分割がまとまって不動産を取得した場合(法定相続分で登記していた場合は、法定相続分を超えて取得した場合)、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に応じた登記を申請する義務です(不動産登記法第76条の2第2項、第76条の3第4項)。

遺産分割が終わらないまま、いつの間にか10年が過ぎると、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなる「10年ルール」の問題も生じます。期限の管理は、登記と遺産分割の両方で行う必要があります。

あわせて読みたい:10年ルールについては「遺産分割の「10年ルール」とは?2028年3月期限までにすべきこと」で解説します。

登記のあとに引っ越した場合も申請義務がある

2026年(令和8年)4月1日からは、登記名義人の住所や氏名が変わった場合に、変更日から2年以内に変更登記を申請する義務も始まっています。正当な理由なく申請しないと5万円以下の過料の対象で、2026年(令和8年)4月1日より前の変更については2028年(令和10年)3月31日が期限です。相続登記を済ませた後に転居した場合も対象になりますので、あわせて確認してください。

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

出典:法務省「所有不動産記録証明制度について」

出典:東京都主税局「課税明細書の見方」

出典:法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」

期限を過ぎると本当に10万円の過料がかかる?手続きと「正当な理由」

結論:期限の翌日に自動的に科されるものではありません。登記官からの催告に応じずに申請しなかった場合に限り、裁判所が10万円以下の範囲で判断します。ただし、催告が来ないことを期待して放置するのは得策ではありません。

過料は、刑罰である「罰金」とは異なり、行政上の秩序を保つための金銭的な制裁です。前科にはなりませんが、裁判所の決定に基づいて納付義務が生じます。相続登記の申請義務に正当な理由なく違反した場合の上限は10万円です(不動産登記法第164条第1項)。

過料が科されるまでの流れ

段階 内容
①登記官が義務違反を把握 法務省の運用では、相続人が遺言書や遺産分割協議書を添付してある不動産の登記を申請した際に、その書類に他の不動産の取得も記載されていた場合に、登記官が職務上把握して手続きが始まるとされています。
②催告 登記官は、直ちに裁判所へ通知するのではなく、まず申請義務を負う方に対して、相当の期間を定めて相続登記を申請するよう書面で催告します。
③期間内に申請すれば終了 催告された期間内に申請すれば、それまでの正当な理由の有無にかかわらず、裁判所への通知は行われません。
④裁判所への通知 期間内に申請がなく、正当な理由の申告もない(または申告があっても認められない)場合に限り、登記官が管轄の地方裁判所に通知します。
⑤裁判所の決定 裁判所が要件を満たすかどうかを審理し、10万円以下の範囲で過料を科すかどうかと金額を決定します。

つまり、期限を過ぎていても、催告を受けた段階で申請すれば過料の通知には進みません。すでに期限を過ぎてしまった方も、今から申請する意味は十分にあります。

ただし、「催告書が届いてから動けばよい」と考えるのは危険です。催告で定められる期間は限られており、そこから戸籍の収集や遺産分割の話し合いを始めても間に合わず、過料の通知に進んでしまうおそれがあります。催告を待つのではなく、期限を意識して先に準備を進めてください。

「正当な理由」として認められる事情

法務省は、申請できないことに正当な理由があると認められる例として、次の5つを挙げています。これらに限定されるものではなく、個別の事情に応じて登記官が判断します。

正当な理由の例 内容
相続人が極めて多数 数次相続などで相続人が極めて多数に上り、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合
遺言や遺産の範囲に争いがある 遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人の間で争われており、不動産を誰が取得するかが明らかにならない場合
重病など 申請義務を負う方自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
配偶者からの暴力の被害 配偶者からの暴力の被害者などで、生命・心身に危害が及ぶおそれがあり避難を余儀なくされている場合
経済的な困窮 経済的に困窮しているために、登記の申請に要する費用を負担する能力がない場合

「兄弟と仲が悪くて話せない」「忙しくて手が回らなかった」といった事情は、それだけでは正当な理由とは認められにくいと考えられます。2つ目の「争いがある」も、親族間の感情的な対立があるというだけでは足りず、遺言の有効性や遺産の範囲について具体的な争いがあり、そのために不動産を誰が取得するかが決まらない状態であることが必要です。実際に争いがある場合は、家庭裁判所への調停の申立てや、内容証明郵便でのやり取りなど、争いの存在を示す記録を残しておくことが重要です。

【弁護士×宅建士の視点】過料より「売れない・担保に入れられない」ほうが重い

「過料は10万円以下なら、払えば済むのでは」と思われる方もいらっしゃいますが、実務で深刻なのは過料ではなく、名義が亡くなった方のままでは、買主への所有権移転登記や抵当権の設定登記ができないため、売却も、担保に入れての融資も進められないことです。実家を売って介護費用に充てたい、空き家を処分したいと思ったときに、名義の整理から始めることになり、相続人全員の協力を得るところで止まってしまうことが少なくありません。過料の有無にかかわらず、名義は早めに整えておくことをおすすめします。

出典:法務省「相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン」

出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

期限や手続きについてご不安な方は、ご相談をお受けしています。ご事情を伺ったうえで、何から手を付けるべきかを一緒に整理します。

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相続登記を自分で申請する手順と必要書類は?登録免許税と免税措置

結論:手順は「不動産の特定→戸籍の収集→分け方の確定→申請書の作成→法務局へ提出」の5段階です。登録免許税は固定資産税評価額の0.4パーセントで、2027年(令和9年)3月31日までは2つの免税措置があります。

申請までの5つの手順

  1. 不動産を特定する:納税通知書、名寄帳、所有不動産記録証明書で、亡くなった方名義の不動産をすべて洗い出します。登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、現在の名義人と持分を確認します。
  2. 戸籍を集めて相続人を確定する:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在の戸籍を集めます。本籍地が転々としている場合や、数次相続がある場合は数十通に及ぶこともあります。
  3. 分け方を確定する:遺言書があればその内容に従います。なければ、相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成して全員が実印を押します。協議がまとまらない場合は、登録免許税がかからず、単独で義務を果たせる相続人申告登記を優先して検討します。いったん法定相続分で正式な登記をする方法もありますが、その後に遺産分割がまとまった際に、更正の登記(登録免許税は不動産1個につき1,000円)を改めて申請する手間がかかります。
  4. 申請書を作成し、登録免許税を計算する:法務局のウェブサイトに様式と記載例があります。登録免許税は収入印紙で納めます。
  5. 管轄の法務局に提出する:不動産の所在地を管轄する法務局に、窓口・郵送・オンラインのいずれかで申請します。練馬区内の不動産は東京法務局練馬出張所が管轄です。

必要書類(取得のしかた別)

取得のしかた 主な必要書類
法定相続分で登記する 登記申請書/亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)/亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票/相続人全員の戸籍/不動産を取得する相続人全員の住民票/固定資産税評価証明書
遺産分割協議で登記する 上記に加えて、遺産分割協議書(相続人全員が実印を押印)/相続人全員の印鑑登録証明書
遺言で登記する 登記申請書/遺言書(自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みのもの、または法務局の遺言書情報証明書。公正証書遺言は正本または謄本)/亡くなった方の死亡がわかる戸籍/亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票/不動産を取得する相続人の戸籍と住民票/固定資産税評価証明書

戸籍の束は、法務局で「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けておくと、その写し1通で代えることができます。交付は無料で、金融機関の相続手続きにも使えますので、不動産と預貯金の両方がある相続では先に取得しておくと手続きが楽になります。

登録免許税の計算方法

相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額を課税標準として、その1,000分の4(0.4パーセント)です。評価額は、固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書の「価格」の欄で確認できます。税額の計算に使う「課税標準額」の欄とは別の数字ですので、取り違えないようにしてください。なお、4月から新しい年度の納税通知書が届くまでの間に申請する場合は、その年度の固定資産評価証明書で評価額を確認してください。計算の手順は次のとおりです。

  • 固定資産税評価額の合計から、1,000円未満の端数を切り捨てる(1,000円未満のときは1,000円)
  • その金額に0.4パーセントを掛ける
  • 計算した額の100円未満の端数を切り捨てる(1,000円未満のときは1,000円)

たとえば、土地と建物の評価額の合計が3,456万7,890円の場合、課税標準は3,456万7,000円、これに0.4パーセントを掛けた13万8,268円から100円未満を切り捨てて、登録免許税は13万8,200円です。練馬区のように土地の評価額が高いエリアでは、登録免許税だけで10万円を超えることは珍しくありません。

2027年3月31日までの2つの免税措置

次の2つの場合は、登録免許税がかかりません。申請書には、1つ目は「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」、2つ目は「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載する必要があります(記載がないと免税措置は受けられません)。

免税措置 内容 適用期限
相続した人が登記をしないまま亡くなった場合 個人が相続で土地を取得し、その登記を受ける前に亡くなったときは、その亡くなった方を名義人とするための登記について登録免許税がかからない(数次相続で、途中の名義人の登記を省略せずに行う場合に該当) 2027年(令和9年)3月31日まで
評価額が100万円以下の土地 相続による土地の所有権移転登記で、不動産の価額(固定資産税評価額)が100万円以下のものについて登録免許税がかからない(持分を取得する場合は、土地全体の価額に持分の割合を掛けた額で判定) 2027年(令和9年)3月31日まで

いずれも土地に限られ、建物には適用されません。また、1つ目の免税措置で登録免許税がかからないのは、数次相続でいえば「祖父から父へ」の登記の分だけです。「父からご自身へ」の登記には、通常どおり登録免許税がかかります。

注目していただきたいのは、免税措置の期限が、過去の相続に対する申請期限と同じ2027年(令和9年)3月31日である点です。数次相続が重なっている方や、評価額の低い土地を複数お持ちの方は、期限までに申請することで、過料を避けられるだけでなく、登録免許税の負担も抑えられます。

手続きに迷ったら法務局の「登記手続案内」

東京法務局では、申請書の作成方法や添付書類について職員が案内する「登記手続案内」を完全予約制で行っています。お問合せ先は、登記電話案内室(03-5318-0261、平日8時30分から17時)となっております。

あわせて読みたい:練馬区の手続き先は「練馬区の相続手続き先一覧表|東京家庭裁判所・法務局等の管轄を弁護士が解説」にまとめています。

出典:東京法務局「相続登記ガイドブック」

出典:法務省「登録免許税の計算」

出典:法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」

出典:東京法務局「登記手続のご案内」

遺産分割がまとまらない・相続人と連絡が取れない場合はどうする?

結論:遺産分割が終わらなくても、「相続人申告登記」を申し出れば、ひとまず申請義務を果たしたことになります。ただし、権利を確定させる登記ではないため、売却などはできず、遺産分割がまとまったら3年以内に正式な登記が必要です。

相続人申告登記は、「登記名義人に相続が開始したこと」と「自分がその相続人であること」を法務局に申し出る制度です(不動産登記法第76条の3)。期限内に申出をした相続人は、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。

比較項目 相続登記(正式な登記) 相続人申告登記
登記の性質 所有権の移転を公示する 相続人であることを付記するだけで、権利や持分は公示しない
申請できる人 遺言・遺産分割で取得した相続人が申請(法定相続分での登記は、相続人の1人が全員分を申請することもできる) 各相続人が単独で申出できる
必要書類 出生から死亡までの戸籍、遺産分割協議書、印鑑証明書など 申出人が相続人であることがわかる戸籍と住民票など、簡易
登録免許税 評価額の0.4パーセント(免税措置あり) かからない
売却・担保設定 できる できない(正式な登記が必要)
遺産分割が成立した後 遺産分割に基づく登記なら追加の義務なし。法定相続分で登記した後に、法定相続分を超えて取得した場合は、成立した日から3年以内に登記が必要 成立した日から3年以内に正式な登記が必要

相続人申告登記は、あくまで「期限に間に合わせるための暫定措置」です。遺産分割がまとまる見込みがあるなら、協議を進めて正式な登記まで済ませることが本筋です。なお、相続人申告登記ではなく法定相続分で登記した場合も、その後に遺産分割がまとまれば、不動産を取得した相続人が単独で更正の登記を申請して名義を整えることができます(2023年(令和5年)4月1日以降の取扱い)。

あわせて読みたい:相続人申告登記の手続きは「「相続人申告登記」とは?遺産分割が終わらない時の対処法」で詳しく解説します。

相続人と連絡が取れないとき

遺産分割協議に基づいて相続登記をするには、相続人全員の合意(遺産分割協議書への実印の押印と印鑑証明書)が必要です。連絡先がわからない相続人がいる場合は、戸籍の附票から現在の住所を調べることができます。手紙を送っても返事がない、所在がまったくわからないという場合は、家庭裁判所の遺産分割調停や不在者財産管理人の選任といった法的な手続きを検討することになります。

相続人の数が増えて協議の見通しが立たない場合も、放置するほど相続人は増えていきます。相続人申告登記で期限に対応しつつ、並行して協議や調停の準備を進めることをおすすめします。

あわせて読みたい:相続人が多数になった場合の進め方は「長期間放置して相続人が増大(数十人)した不動産の解決ステップ」で解説します。

出典:法務省「相続人申告登記について」

不動産が絡む相続で登記を放置するとどんな不利益がある?

結論:売却や担保設定の手続きを進められない、相続人が増えて協議が難しくなる、管理責任を問われる、評価をめぐる争いが先送りになる。この4つが過料よりも重い実害です。

相続登記を放置すると、主に次のような不利益が生じます。

  • 売却や担保設定の手続きを進められない:名義が亡くなった方のままでは、買主への所有権移転登記や抵当権の設定登記ができません。売却を決めてから名義の整理を始めると、売却の時期を逃すことがあります。
  • 相続人が増え、面識のない親族との協議になる:放置している間に相続人が亡くなると、その配偶者や子が相続人に加わります。数世代にわたると、会ったこともない親族と遺産分割協議をしなければならなくなります。
  • 戸籍の収集と相続人調査に時間と費用がかかる:相続人が多くなるほど、集める戸籍の数と、所在を調べる手間が増えます。
  • 管理不全による損害賠償の責任:誰が管理するかが曖昧なまま、空き家や土地の管理が行き届かなくなりがちです。倒壊や倒木で近隣に損害を与えた場合には、登記の有無にかかわらず、相続人が責任を問われることがあります。

これに加えて、不動産が絡む相続に特有の問題があります。遺産分割が先送りになるほど、「いくらの不動産として分けるのか」という評価の争いが、不動産の値動きとともに複雑になることです。

【弁護士×宅建士の視点】期限を「協議を進める理由」に使う

相続登記の期限は、相続人の間で止まっていた話し合いを再開するきっかけになります。「2027年3月までに登記の対応をしなければならない」という共通の期限があると、感情的な対立で動かなかった協議でも、具体的な分け方の検討に進むきっかけになることがあります。当事務所では、宅地建物取引士としての知見を活かして、路線価・固定資産税評価額・実勢価格の違いを踏まえて評価の考え方を早い段階で整理し、必要に応じて査定や鑑定を手配して評価の土台をそろえたうえで、弁護士として分け方の交渉と遺産分割協議書の作成を進めます。相続登記の申請や売却が必要な場合は、ご意向を伺ったうえで司法書士や不動産会社と連携して進めます。

あわせて読みたい:不動産の分け方と評価の考え方は「相続した実家など不動産の分け方は?揉めない遺産分割と適正評価を弁護士が解説」で解説しています。

よくあるご質問

Q. 2027年3月31日までに「申請」すればよいのですか。それとも登記が「完了」している必要がありますか。

A. 法律上の義務は「申請」です。期限までに管轄の法務局に申請書を提出すれば、義務を履行したことになります。ただし、書類に不備があると補正や取下げになることがありますので、期限ぎりぎりではなく余裕をもって申請してください。

Q. 相続人申告登記をしておけば、過料はかかりませんか。

A. 期限内に相続人申告登記の申出をすれば、申出をした方については、相続登記の申請義務を履行したものとみなされますので、その義務違反を理由とする過料の対象にはなりません。ほかの相続人の義務まで果たされるわけではありませんので、相続人全員が義務を果たすには、それぞれが申出をする必要があります(連名でまとめて申出をすることもできます)。また、その後に遺産分割で不動産を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に正式な登記を申請する義務が別途生じます(この義務は、相続人申告登記では果たせません)。

Q. 期限をすでに過ぎてしまいました。今から申請しても意味がありますか。

A. あります。過料は、登記官からの催告に応じずに申請しなかった場合に限り、裁判所が判断する仕組みです。催告された期間内に申請すれば、裁判所への通知は行われません。期限を過ぎていることを理由に先延ばしにするのではなく、できるだけ早く申請することをおすすめします。

Q. 土地だけ、または建物だけでも対象ですか。私道の持分はどうですか。

A. 相続で取得した不動産はすべて対象です。土地・建物の別や、持分の大小は問いません。私道の共有持分は、固定資産税が非課税とされていることが多く、納税通知書に載らないことがあるため、見落としやすい不動産の代表例です。名寄帳や所有不動産記録証明書で確認してください。

Q. 自分で申請するのと、専門家に依頼するのとでは何が違いますか。

A. 遺言があり相続人も少ない場合は、法務局の登記手続案内を利用してご自身で申請することも可能です。一方、相続人が多い、遺産分割の話し合いがまとまらない、不動産の評価で意見が分かれているといった場合は、登記の前段階である遺産分割そのものに法的な整理が必要です。当事務所では、遺産分割の協議や調停が必要な案件をお引き受けしています。相続登記の申請は、ご意向を伺ったうえで司法書士と連携して進めます。

Q. 相談は無料ですか。

A. 当事務所では無料相談は行っておりません。ご相談は60分ごとに税込11,000円でお受けし、費用は計算方法を含めて面談時に明確にお伝えします。

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この記事の監修者

家村 邦雄(いえむら くにお)/石神井法律事務所 弁護士(東京弁護士会)・宅地建物取引士

東京都練馬区・石神井公園駅徒歩3分の事務所で相続を中心に取り扱う。弁護士と宅地建物取引士の両資格を持ち、不動産が絡む相続の「評価・分割・名義変更・売却の段取り」まで、法律面から一貫してサポートできるのが強み。難しい手続きをわかりやすく説明し、依頼者が納得して進められることを大切にしている。

※当事務所は宅地建物取引業者ではないため、売買の仲介は行いません。


【免責事項】

本コラムは、相続に関する一般的な情報をお伝えすることを目的としたものであり、個別の事案に対する法務・税務上のアドバイスではありません。記載内容は公開日時点の法令・制度に基づいており、その後の改正等により取扱いが変わる場合があります。また、税務の取扱いについては、個別の事情により結論が異なることがあります。なお、各機関の所在地・電話番号・受付時間および手数料は変更されることがありますので、お出かけの前に各機関の公式サイトでご確認ください。実際のご判断にあたっては、ご事情を伺ったうえでの助言が必要となりますので、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。本コラムの情報をもとに行われた行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

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