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葬儀費用は遺相続財産から差し引きできますか

葬儀費用は、相続後に発生しているので被相続人(亡くなられた方)の債務ではありません。
当然に葬儀費用を遺産総額から差し引くことができるわけではありません。もっとも、相続人間で合意の上、葬儀費用を遺産総額から差し引いて残りを相続人間で分割するということは可能です。
相続人間で葬儀費用の負担者について合意ができない場合は、訴訟で決着を付けることになります。
葬儀費用の負担者については、
①喪主が負担すべきであるとする説
②相続人が共同で負担すべきであるとする説
③相続財産から負担すべきであるとする説
④その地方の慣習にしたがって負担すべきであるとする説
があるとされています。
近年の裁判所の判断は、①の喪主が負担すべきであるとする説が主流になっています。
なお、①の喪主が負担すべきであるとする説を採用したとして紹介されることが多い名古屋高等裁判所の平成24年3月29日の判決の事案は、親が亡くなって相続人は二人の子でしたが、20年以上、親子の交渉はなく、一方で比較的密な交流があった被相続人の兄弟が喪主を務めたという事案でした。判決では、長男は葬儀に出席しなかったことも認定されています。このような事案では、葬儀費用を喪主が負担すべきという判断は妥当な結論のように思われます。